芦田愛菜と「メタモルフォーゼの縁側」

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私はあまりテレビドラマを見ないので、子役時代の芦田愛菜というタレントをよく知りません。それでも「阪急電車 片道15分の奇跡(11年)」を観た時に、SNSで「芦田愛菜という子役は、宮本信子よりもずっと演技がうまい」と書き込んだ記憶があります。暫く学業に専念していたようですが、本格的な主演作として選んだのは大森立嗣監督の「星の子(20年)」。ありがちな青春映画ではなく、作家性の強い監督のもとで、新興宗教に傾倒する両親に育てられた少女という難しい役どころを選び、その孤立した少女を見事に演じていたこの女優の聡明さに唸りました。彼女とそのスタッフはしっかりと出演作を見極め、自分のキャリアをコントロールしようとしているようです。

「星の子」の次の出演作として狩山俊輔監督の「メタモルフォーゼの縁側」を選んだ理由はわかりませんが、この原作コミックが話題になっていたことを知らない私のような一観客からすると、11年前に共演した先輩女優・宮本信子との再共演を通じて子役から成長した女優としての恩返しをしようとしているようにも見えます。そして、この作品でもまた凡庸ならざる存在感を発揮してくれています。

物語はなかなか捻りの効いたユニークなもので、偶然BLコミックに興味を持った老婦人市野井雪(宮本信子)と書店でバイトしている佐山うらら(芦田愛菜)の年が離れた友人としての交流を描きます。BLコミックに単純に好奇心を抱く雪と、BLに惹かれることに後ろめたさを感じながらも話し合える友人が出来たことに嬉しさを隠せないうらら。二人が熱中するコミックの作者・コメダ優(古川琴音)や、うららの幼馴染の河村紡(高橋恭平)、河村の彼女橋本英莉(汐谷夕希)らとの関係を織り交ぜながら、うららのささやかな成長が描かれていきます。

芦田愛菜の、不器用で少し寂しげな佇まいがとても良い。懸命に走る後ろ姿にも胸を打たれます。聡明で素直な女の子というのは芦田愛菜のパブリックイメージだと思いますが、作品の方もその通りにとても素直な作品で気持ちよく観ることが出来ます。そんなにBLが好きなら、自分で描いてみたら?と雪に勧められるままに同人誌を作るうらら。当然、その後にはちょっとした奇跡が待っているのですが、だからと言ってうららの人生が大きく変わったりしないところが、この作品の良さだと思います。ささやかな出会いや奇跡は人生に起こり得るものだけれど、人は本質的には大きく変わらないし、少しずつ自分に出来ることをやっていくしかない。そんな実直な普通の少女の在り方が、芦田愛菜という女優を通じて伝わってきます。

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