ゼンデイヤと「チャレンジャーズ」

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映画はテニスコートの上で、ネットを挟んで対峙する二人の青年の姿から始まります。それを客席から見つめる、ゼンデイヤ演じるタシ・ダンカン。ロングスカートから覗く彼女の膝には、白い傷跡が見える。しかしそれは一瞬で、次のカットでは既にその膝はスカートに隠されます。この傷跡こそがタシと二人のプレイヤー、アート・ドナルソン(マーク・フェイスト)とパトリック・ズワイグ(ジョシュ・オコナー)を運命に導く聖痕として映画を支配するのです。この試合の経緯と、三人の10年以上にわたる愛憎をフラッシュバックしながら、映画は進みます。そしてこの試合が普通のテニスの試合ではなく、ある種「果し合い」のような意味合いであることが次第に明らかになります。

この快作といっていい「チャレンジャーズ」を撮ったのは「君の名前で僕を呼んで(18年)」のルカ・グァダニーノ。彼らしい、性差を越えた愛と憎しみのパッションが、観客を揺さぶり続けます。ファッションアイコンのゼンデイヤは、可愛らしチャーミングな10代から、その後の辣腕のテニスコーチとなる姿までを演じており、特にテニスのシーンでしなやかな身体からフォアハンド、バックハンドを繰り出す姿は、スポーツ本来の肉体的な美のフォルムに収まっていて見事です。プロデューサーも務めるゼンデイヤがこの作品の中心にいるのは間違いありません。二人の人生を翻弄する姿は、一般的にはファム・ファタールと呼ばれるかもしれません。しかし、この作品が真にユニークなのは、その女王然としたゼンデイヤさえも置き去りにしてしまう、二人の男であるアートとパトリックのパッションが突発的に現れる点です。三人のキスシーンがいつしか彼ら二人のキスになる場面、食堂で椅子を引き寄せるシーン、そして勿論、最後に訪れる予想外の感情の爆発。ストップモーションやガラス張りのコートやら、映像的なギミックがふんだんに駆使されますが、全てがラストシーンに集約されていきます。

ゼンデイヤの膝に刻まれた聖痕。タシとパトリックがペアルックのように着ている「I TOLD YA(だから言ったでしょ)」と大書されたTシャツ。トレント・レズナーとアッティカ・ロスの手になる、爆音のサウンドトラック。様々な”兆し”を発しながら最後に訪れるカタルシスに、観客もゼンデイヤとともに叫ばずにいられません。

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