2024年映画ベスト
今年、映画館で観た映画のうち、良かったものを10本。
・夜の外側(マルコ・ヴェロッキオ)
・Scenarios & Expose du film annonce du film “Scenario”(J.Lゴダール)
・ナミビアの砂漠(山中瑤子)
・夜明けのすべて(三宅唱)
・チャレンジャーズ(ルカ・グァダニーノ)
・ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ(アレクサンダー・ペイン)
・悪は存在しない(濱口竜介)
・二つの季節しかない村(ヌリ・ビルゲ・ジェイラン)
・至福のレストラン 三つ星トロワグロ(フレデリック・ワイズマン)
・墓泥棒と失われた女神(アリーチェ・ロルヴァケル)
すっかり配信が定着しているなかで、わざわざ高い料金を支払って映画館で映画を観るというのもかなり物好きな趣味になりつつあるような気もします。先日観たアルゼンチン映画「トレンケ・ラウケン」などは、4時間を超える作品で4回しか上映機会がなく、インターネット予約がないので夕方からの上映にもかかわらず午前中に映画館まで行って整理券を貰わないと観ることができない。そんなヒマな人が私以外にいるのかと思いきや、連日満席で、映画館は異様な熱気に溢れていました。
色々と便利になる一方で、このような「今しか観ることができない映画」というのも確実に存在するわけで、まだしばらくは映画館通いを続けようと思います。
選んだ10本について、ひとこと。
今作と「エドガルド・モルターラ」と、今年は監督作品が2本公開されたヴェロッキオ・イヤー。両作とも政治と家族と誘拐がテーマというのも、筋が通っています。
ゴダールの遺作は「奇妙な戦争」だと思っていましたが、実はこの「シナリオ」が遺作だそう。最後まで人騒がせな人です。この作品には安楽死を実行する前夜のゴダールの姿が収められており、最後に「これでよし」と呟く。頑固親父よ、永遠に。
山中瑤子監督と河合優実のコンビは、今年最強のタッグでしょう。久しぶりに、映画を観ていて監督の才能に圧倒されるという経験をしました。
三宅唱監督の新作には泣かされましたが、どのシーンで泣いたのか覚えていません。もしかしたら最初から最後まで泣いていたのかもしれません。
「チャレンジャーズ」はフェミニズム映画と思いきや、最後の反転が見事。ゼンデイヤが着るロエベのTシャツ、「I TOLD YA(だから言ったでしょ?)」がわたし的には今年の流行語大賞。
アレクサンダー・ペインは良質な作品を作り続けていて、私は彼の大ファン。
悪は存在しない。ならば当然、善も存在しない。濱口竜介の新作は、デビュー当初の辛辣さが存分に発揮されていて、痛快でした。
ただし、辛辣さという点では「二つの季節しかない村」の方が上。気が滅入るほど凡庸で意地の悪い男が主人公ですが、映画というものはそれでも観るに値するのだから面白い。
ワイズマンは毎作、ドキュメンタリーなのに全てのショットが計算されています。
ロルヴァケルの新作は、時間と空間を縦横に行き来し、やがてヴィスコンティやフェリーニの記憶に辿り着く。芳醇な映画の時間を楽しみました。