第32回東京国際映画祭「ジャスト6.5」
コンペティション部門「ジャスト6.5」(イラン/サイード・ルスタイ監督)を観賞。
麻薬取締官とドラッグディーラーのボスの物語。捕まえる前よりも捕まえた後の留置場での攻防を描いています。
一人の麻薬王を捕まえるのにジャンキーの巣窟になっているスラム街を丸ごとしょっぴくやり方に驚きますが、まるで人権無視の強制収容所のような収監所での取り調べや賄賂で麻薬取締役官を買収しようとするドラッグディーラー等、どこまでイランの実態を表しているのかわかりませんが迫力のある場面が続きます。特に麻薬王を演じる俳優が良く、悪役ながらこの役柄を魅力的に見せています。自分の子供に罪を背負わせようとする者など収監された犯罪者たちの群像を織り込みながら、やがて捕らえられたドラッグディーラーと麻薬取締官の行きつく果てを描いて行きます。 イランと言えば最近では何と言ってもアスガー・ファルハディ監督が注目されており、エンターテイメント色の強い作風は今作にも影響を与えているように思いますが、イランの社会問題との関連性を感じさせる描写が稀薄で、ラストシーンの納め方も一般的なメッセージに留まっている印象を受けました。