第32回東京国際映画祭「海辺の映画館―キネマの玉手箱」

ジャパンナウ部門「海辺の映画館―キネマの玉手箱」(大林宣彦監督)を鑑賞。

今夜閉館になる尾道の映画館では戦争映画の特集上映が行われる。そこに集まった三人の青年は、ノリコと呼ばれる少女を救うために映画の中に入り込み、鳥羽・伏見の戦いから白虎隊、沖縄戦、更には原爆が投下される広島を体験していく。

大林宣彦監督の最新作は、反戦についての強いメッセージを日本の近代戦争や戦前戦後の映画史に交えて描く、物語の要約が不可能な巨大な「個人映画」です。「この空の花 -長岡花火物語(12年)」「野のなななのか(14年)」「花筐/HANAGATAMI(17年)」の”戦争三部作”で、異様なまでのエネルギーと情報量で観客をまさに圧倒してきた最近の大林監督ですが、ここに来てまたしても映画が壊れる寸前の臨界点を見極めるかのような荒々しく奔放な作品を作り上げました。メッセージは極めてシンプルで、「映画が世界を変えるということは観客が世界を変えるということに他ならない。今、映画の前にいる君は、何をするのか?」ということが、映画の外と中を行き来しながら語られて行きます。但し、過去の映画と現実のはざまを描く作品(例えばウディ・アレンの「カイロの紫のバラ(85年)」)のような映画愛の発露やギミックとしての「現実と映画との往復」ではなく、ただただ苛烈に「映画を観ることが他人ごとになっていないか」を問い続けます。

戦争を体験し、軍国少年だった大林監督。今の日本の原点は日本の内戦「鳥羽・伏見の戦い」だという歴史観も独特ですが、日本兵が日本人を虐殺する白虎隊から沖縄戦へと続くパースペクティブは、戦争が本当に悲惨なのは、同じ国民、民族が殺し合う事態を招くことだというメッセージのように感じられます。山中貞雄や小津安二郎、さくら隊といった戦中の映画・演劇人を総動員し、(映画の中で助けを求め続けるノリコは、小津映画のヒロイン「紀子」のことかも知れません)反戦のメッセージを大林監督の映画への情熱、自身のプライベートな戦争の記憶で綴った、まさに異形の大作です。 過去の大林作品に出演してきた俳優たちが大挙して出演しているのも印象的。 舞台挨拶に車椅子姿で登場した大林監督が最後に残した言葉は、「映画は素晴らしい」。

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