第32回東京国際映画祭「アトランティス」

コンペティション部門「アトランティス」(ウクライナ/ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督)を鑑賞。

主人公は元ウクライナ軍の兵士。今は製鉄所で働いている。同じ元兵士仲間は戦争のPTSDのストレスからか自殺してしまう。そんな中、身元不明の兵士を発掘し埋葬する団体に出会い、その手伝いをすることになり、担当女性に惹かれていく。

映画祭のHPを見ると2025年の戦争後という設定ですが、映画の中には特に言及が無く、殆ど現在のウクライナ紛争を描いた物語のように見えます。この2025年、という極めて近い未来の「戦後」を舞台に設定していること自体が現状のロシアとの紛争に対する強いメッセージなのかも知れません。寡黙な世界がワンシーンワンカットで描かれ、ウクライナの荒涼といた大地と共に言い難い寂寥感に襲われる作品で、主人公の孤独が迫ります。荒涼とした大地、巨大な古い製鉄所、戦禍により荒廃したマンション。私たち日本の観客にはズビャギンツェフ監督に代表される現代ロシア映画の風景にとても近いものを感じさせるのですが、上映後のQ&Aで、監督と主演男優は帝国主義的なロシアに対して強い批判を口にしています。暗闇に浮かび上がるサーモグラフィの映像や、巨大なショベルに火をくべるワイルドな入浴シーンの余りにも極端に長いワンシーンワンカット等、心に残るものがあります。それにしても「アトランティス」という題名は何を指すのでしょうか。強国であってもやがてはアトランティスのように滅びるというロシアに対する暗喩でしょうか。

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