2023年映画ベスト

 

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今年観た封切作品から、印象に残ったものを5本。

「ベネデッタ」(ポール・バーホーベン監督)

あまり理屈はなく、単純に面白かった。観ているあいだ中、次はどうなるのかとわくわくしました。これは奇蹟なのか?それともペテンなのか?という疑念を映画の推進力としながら、最後には「そんなことはどっちでもよろしい」と言い放つバーホーベンの胆力に感服しました。だけどよく考えてみたら映画だって、常に観客の「傑作か?こけおどしか?」と品定めするような好奇の目に晒されているわけで、特にバーホーベンはその綱渡りをキャリアを通して演じて来た。そう考えると、中々感慨深い作品でもありました。シャーロット・ランプリングの素晴らしさは、言わずもがな。

「ショーイング・アップ」(ケリー・ライカート監督)

ここ数年で、日本でも一気にその作品が観ることが出来るようになったケリー・ライカートの新作。今年は二本公開されて、一風変わった青春映画のようにも見える「ファースト・カウ」も良かったけれど、この「ショーイング・アップ」にはよりアメリカのインディーズ映画の精神が感じられました。混沌とした日常に訪れるささやかな奇蹟(もしくはハプニング)という構造はアルトマンの「ショート・カット」やポール・トーマス・アンダーソンの「マグノリア」を思い起こさせます。

「枯れ葉」(アキ・カウリスマキ監督)

カウリスマキの新作が観られることは嬉しいことだし、ウクライナ戦争にアクチュアルに反応して、6年ぶりに現場復帰を果たした心意気にまず打たれます。各シーンを、いかにフレームに納めるかを熟考して撮影をするという、当たり前のことをちゃんとやっている作品を久し振りに観たような気がしました。

「こいびとのみつけかた」(前田弘二監督)

デビュー作以来、前田監督と脚本の高田亮のコンビ作を観続けて来たいちファンとしては、ちょっといつもとは違うな、という印象を持つ作品でした。20年代のハリウッド・スクリューボールコメディへの偏愛を隠さない二人ですが、今作はいつになくリアルでナイーブで、恐らく今撮るべき切迫感があったのではないかと思います。彼らのフィルモグラフィで突出した作品ではないし、失敗している面もあると思うけれど、それでもこの作品の持つ真摯さのようなものは、支持したいと思います。

「雪豹」(ペマ・ツェテン監督)

今年の映画人の訃報で残念だったのは、このペマ・ツェテン。フィルメックスや東京国際映画祭ではおなじみの監督でした。地の果てのような風景が広がるチベットの大地を舞台に、その土地で暮らす人間の営みを点景のように描き出す、乾いたタッチがとても好きでした。作家としても活躍する多彩な才能でしたが若くして亡くなったのが本当に残念です。東京国際映画祭で上映されたこの「雪豹」は、遺作のひとつとのこと。彼の作品の中では最もわかりやすい作品。

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