東京国際映画祭その1 「ナポリ、輝きの陰で」

10月25日から始まった、第30回東京国際映画祭。昨年観た何本かがとても面白かったこともあり、今年はコンペティション参加作品を中心に出来るだけ観ることにしました。

一本目は、イタリアのシルヴィア・ルーツィ、ルカ・ベッリーノ両監督の「ナポリ、輝きの陰で」。

粗筋は、露店のぬいぐるみ売りをして生計を立てている父親が、歌が上手い娘に目をつけ、借金をしてレコーディングをし、売り込みにやっきになるが・・というもの。

作品が主演の親子に特別な思い入れで描いていることは画面からも明らか。鑑賞後のティーチインでの監督の話によると、主演の二人は素人の本当の親子で、監督が偶然見つけたとのことでした。

顔のアップ(特に父親)中心の画作り、手持ちカメラ中心で素人俳優によるリアルな手触りの作品ではありますが、内容は父親の思い込みで娘を歌手に仕立てようとする、結構無茶なドラマ。私はこれはオフビートなコメディなのかと思って観ていたのですが、どうやら本気のようです。

原題の「クレーター」はナポリ近郊の比較的貧困層の多い地域で、そこにスポットを当てた作品とのこと。しかしながら、作品を観る限りはさほど深刻な貧困にあえいでいるようにも観えません。幸か不幸か偶然に撮りたくなる主役親子の二人に出会ったことで、貧困層の閉塞感という本来のテーマより、親子の現実の生活に沿って描くことに重点が置かれて、焦点が甘くなってしまった印象を受けました。

 

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