第19回東京フィルメックス「マンタレイ」
第19回東京フィルメックスコンペティション部門「マンタレイ」(プッティポン・アルンペン監督)を鑑賞。
海があり、近くには森があるタイの辺境が舞台。一人の青年が森で銃で撃たれた男を救うが、助けた男は寡黙にして何も喋らない。やがて二人は心を通わせるが、青年はギャングめいた仕事を手伝わされているらしく、やがて行方不明になってしまう。取り残された男の前に、青年の別れた妻が現れ、一緒に暮らし始め・・。
と、粗筋を書いたところで余り作品の理解の助けにはならなそうです。監督は以前ロヒンギャ難民を扱った映画の撮影監督ということで、この作品の冒頭にもロヒンギャ難民への献辞が捧げられています。映画を注意深く観ていると、青年が助けた男は恐らくロヒンギャ民族であり、多くのロヒンギャ民族が逃亡の果てに森で虐殺され、その魂が光る石となって夜の森を照らしているらしいのですが、はっきりと語られることはありません。映画祭の出品作はセリフが少ない寡黙なものが多いという印象がありますが、この作品も殆どセリフが無く説明が排されています。タイの監督ということで誰もがアピチャッポンを想起するでしょうが、森の中の幻想的なシーンを観ていると共通点を感じずにはいられませんし、ロヒンギャ難民を扱っているということで昨年の東京国際映画祭で上映されたマレーシア映画「アラケット ロヒンギャの祈り」(エドモンド・ヨウ監督)を思い起こす方も多いでしょう。幾らか冗長な面も感じましたが、腰の据わった力のある作品という印象を持ちました。