第32回東京国際映画祭「わたしの叔父さん」
コンペティション部門「わたしの叔父さん」(デンマーク/フラレ・ピーダセン監督)を鑑賞。
デンマークの広大な農村地帯で、幾らか身体の不自由な叔父と暮らす若い女性の物語。獣医になりたいという夢をささやかに胸に秘めながら、叔父の身辺の世話をし、農業、酪農を手伝う毎日。何かと気に掛けてくれる近所に住む獣医や、恋人となる青年はいるものの、叔父のことを放っておけない。叔父はマイペースに見えながらも姪の将来を気に掛けている。
映画祭で上映される映画を観ていて気付くのは、非常に台詞が少なく寡黙な作品が多いことです。 一般映画とは異なり余り観る機会の少ない国々の作品が多いため、言葉よりも映像で理解させる作品が選ばれやすいという事情もあるのかも知れません。今作も、特に前半は言葉少なく、淡々とした描写が続きます。主人公の女性が教会で出会った青年とデートをするあたりから、叔父が一緒に着いてきたりコミカルな要素が増えてきて笑いを誘います。微妙な「間」で笑わせる点は上映後のQ&Aで監督が述べていたように日本映画、小津作品の影響も幾らかあるかも知れません。叔父の愛すべきキャラクターや、主人公である姪の無表情ながら叔父を気遣う心の温かさを感じさせる点から、万人に受け入れられやすい作品だと感じました。少々まとまり過ぎの物足りなさも感じますが、劇場公開しても人気を集めるのではないでしょうか。