第32回東京国際映画祭「湖上のリンゴ」
コンペティション部門「湖上のリンゴ」(トルコ/レイス・チェリッキ監督)を鑑賞。
トルコに暮らす少年は伝統楽器を弾き、歌うアシュク(即興詩人)となるべく師匠について稽古を受けている。少年は師匠と共に演奏を披露した褒美にもらったリンゴを、想いを寄せる少女に渡そうとする。一方で少年の悪戯から日照りが続くこの地では、山羊を生贄として雨ごいをする話が持ち上がる。やがて、少女は結婚することになり、その式場には少年も呼ばれ・・
トルコの美しい自然風景が印象的で、ギターやシタールに似た民族楽器での演奏も心地よい作品です。これはいつの時代の話なのか判断が付かないのですが恐らく大戦後間もない頃の話でしょうか。いずれにせよ時の流れから取り残されたようなトルコの村での寓話的な物語です。アシュクたちが集まって行われる、ラップのバトルのような対決が可笑しい。アシュクたちに婚礼の主催者からある謎が出されます。「鳥の目よりも小さく、10人の大人よりも大きいものは何か」。少年は最後にその答えに気が付くのですが、既に師匠はこの世にいない。少年が大人になる成長譚の一面もある作品です。