第31回東京国際映画祭「三人の夫」

今年も映画祭の季節がやってきました。映画祭の楽しみ方は色々だと思いますが、お気に入りの監督の作品に絞るもよし、観たことのない国の映画に触れるもよし、勘を頼りに時間があけば劇場に飛び込むもよし。玉石混交は当たり前。斜に構えずに、面白い映画に出会う良い機会だと思って楽しみましょう。第31回東京国際映画祭の鑑賞一作目は、コンペティション部門「三人の夫」(フルーツ・チャン監督/香港)

あらすじ

ムイは常人離れした性欲に苦しんでいる。
父親はムイを年老いた漁師に嫁がせ、ふたりの男は彼女に客を取らせて金を稼ぎ、一石二鳥を得る。彼女と驚くようなセックスを体験した青年がすっかり恋してしまい、やがて3人目の“夫”となる。しかし彼だけではムイを満足させることは出来ず、結局、客を取らせ続けることになるが…。(東京国際映画祭オフィシャルサイトより)

性的な映画であることを覚悟しても、ファーストショットのうごめくアワビを観て、焦ります。全篇にわたり精神薄弱と思われるヒロイン、ムイ(クロエ・マーヤン)の色情狂的なセックスシーンが繰り広げられる。香港でここまで性的な表現が許されているのかという驚きもありますが、このクロエ・マーヤンという女優の、でっぷりとした体を揺らしながら、眼を剥きながら、奇声を発しながらの怪演に度肝を抜かれます。

上映後のティーチインでフルーツ・チャン監督は「観ての通りの単純極まりない作品。楽しんでもらえたなら嬉しい」と発言していましたが、どうして、猥雑な見かけの裏には極めて思慮深く設計された作品世界があります。色情狂たるムイの存在は香港のある島に伝わる人魚伝説に通底していることが示唆されますが、ムイが人魚であるというようなありがちな図式に収まることなく、終盤はムイ=伝説の人魚である証左を否定していきます。次第にモノクロームに移行していく映像の中で、ムイは赤い衣をまとい、三人の従者を連れ、決然とした表情で香港の海を渡る。この映画の露悪的な部分は全てラストカットの「色情狂の自由の女神、三人の愚者を連れて海をわたる」というロマンティシズムに結実します。観客はまさに現代の伝説が誕生する瞬間を目撃するのです。

性的な描写に好悪はあるでしょうが、好き嫌いを越えて観なくてはいけない映画があるとしたら、まさにこの映画がその作品です。

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