第19回東京フィルメックス「幻土」
第19回東京フィルメックスコンペティション作品「幻土」(ヨー・シュウホア監督)鑑賞。
シンガポールを舞台としたフィルム・ノワールであり、夢を媒介としたファンタジー色の強い作品でもあります。工事現場から失踪した中国人出稼ぎ労働者を探すシンガポールの刑事。刑事は夢の中で中国人と同化し、中国人の青年はネットカフェのゲームを通じまた他の誰かと繋がっている。中国人青年はネットカフェの女性店員と共に夜のシンガポールを彷徨い、アジアの近隣諸国から土を持ち込み国土を拡大する現代のシンガポールの姿が浮かび上がってくる。
時には日活アクションのようなキッチュなトーンも見せながら、オリジナルなハードボイルド作品になっています。最終的に誰も傷付かず一種幸福なラストを迎えるので、本質的にはフィルム・ノワールでは無いのかも知れません。ある種の爽やかさ、希望さえ感じる作品で、それは監督の若さから来るものではないか。Q&Aに登壇した監督の好青年振りを見ながら、そんなことを考えました。