第20回東京フィルメックス「シャドウプレイ」

東京フィルメックスにて特別招待作品「シャドウプレイ(ロウ・イエ監督)」を鑑賞。

経済成長著しい中国を舞台に、開発から取り残された村落の土地買収・立ち退き交渉を巡る市当局都市開発事業責任者の死、その謎を追う若い刑事、土地買収に絡む新興不動産財閥たちが入り乱れる物語です。実際の事件を元にした作品ということで、いびつな急成長を遂げた中国の姿を生々しく捉えており、一方では開発事業責任者の死の真相を探るミステリー仕立ての側面もあります。若い刑事を巻き込む美女たちがフィルム・ノワールの香りを漂わせもします。

この日の上映後にはロウ・イエ監督によるQ&Aがあり、中国当局による厳しい検閲を題材とした制作のドキュメンタリーも別会場で上映されました。私はドキュメンタリーの方は未見なので詳しいことはわかりませんが、実話を基にしたことによる不都合があったのでしょうか。

作品の方は事件の前後を時系列的に行き来し、主要な登場人物の過去や関係を様々な角度から、幾重にも検証していくのですが、描くたびに人物の描写に深みが増すかと言えばそんなこともなく、書き割りのような人物像をなぞるだけに終わっているように感じます。これは中国に生きる現代人の空疎さを描く狙いがあったのかも知れません。そうだとしても物語を牽引する筈の若い刑事の人物像が極めて平板で魅力に乏しく、 「二重生活(12年)」 「ブラインドマッサージ(14年)」で見せた緊張感に乏しいように感じました。

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