土屋太鳳と「トリガール!」

拝啓 土屋太鳳 様

映画は理系の大学に入学したあなたが通学の為乗り込んだバスで、理系の学生らしくメガネにチェックのシャツを着たむさ苦しいオタク系の男たちに囲まれるシーンから始まります。あなたは入学早々、地方都市の三流理系大学には何の希望も、異性との出会いも無さそうだと悟り暗澹たる気持ちになりますが、そこにロードバイクで一人の男性が颯爽とバスを追い越していき、新しい出会いを予感させます。

この作品は鳥人間コンテストへの出場をクライマックスとした人力飛行機のサークル活動を題材としています。邦画の青春映画にはもはや「部活もの」というジャンルが存在しているようで、古くは「シコふんじゃった」から、最近では「チア☆ダン」「ハルチカ」「ちはやふる」あなたも出演した「青空エール!」まで実に多彩です。主人公が心ならずも未知のジャンルに足を踏み入れ、そこで出会った異性との恋愛騒動が勃発し・・というパターン。「部活もの」は今回もあなたや、間宮祥太朗、池田エライザ、高杉真宙といった俳優がそうであるように、若手俳優のショウケースとしても機能するはずです。あなたは、池田エライザ演ずる同級生に引っ張られサークルを知り、高杉真宙演じるサークルの部長に惹かれ入部し、間宮祥太朗演ずる人力飛行機のパイロットと衝突しながら親交を深めていきます。

この作品のユニークなところは、「部活もの」のパターンを踏襲しながら、一向に深刻な展開にならないことです。恋愛感情や青春らしい自己実現に向けての鬱屈、大会に向けての多少のいざこざはあるものの、そこを掘り下げる気配は無く、邦画としては珍しいほどセンチメンタルさを排した表層的な若者たちの戯れに終始して映画は進みます。物語の紆余曲折よりも、何度も何度もデッサンの描線をなぞるように登場人物のキャラクター描写を繰り返すことを作品の推進力とする点は英勉監督の功績です。

特に出色なのはあなたと間宮祥太朗の掛け合いでしょう。反発しながら惹かれ合う、というのは恋愛映画の常道ではありますが、あなたたちは最後まで漫才的な掛け合いを止めることなく、センチメンタルな感情を噴出させることもなく、実にからりとした関係に終始します。

この作品でのあなたは20代の、多少の挫折を抱えながらも明るく生きる女の子を屈託無く演じており、そこには殆ど性的な匂いがない。それでいながら「先輩」である間宮祥太朗をいつの間にか手玉に取って、関心を引き、しかも自分ではそれに気づいていないという、現実社会であれば「天然」と分類されるであろうキャラクターになっており、そこには土屋太鳳という女優のパブリックイメージの拡大解釈がなされているのかも知れません。

二人が人力飛行を成功させ、琵琶湖上を滑るように飛行しているときに間宮祥太朗が意を決して発するクライマックスでの一言。それに対するあなたの返事に、劇場内は笑いに包まれましたが、そこには恋愛でさえ深刻な事態と捉えず、些末な事と笑い飛ばすこの映画の、青春映画としては極めてユニークなルックが象徴されています。そして、それを実現せしめたのは土屋太鳳という女優のコメディエンヌとしての才と言えるでしょう。

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