ガランス・マリリエールと「RAW 少女のめざめ」

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前略 ガランス・マリリエール様

フランスの新人監督ジュリア・デュクルノーによる「RAW 少女のめざめ」をとても面白く観ました。学問に秀でた少女が、姉も通う獣医大学に入学し寮生活を始める。大学での先輩たちの手荒な歓迎を受け、ベジタリアンであるにも関わらずウサギの肝臓を食べさせられる。肉の味を知った少女は、本能の赴くままに肉を求めて・・という物語はホラー映画の体裁を取ってはいますが、カニバリズムが少女が大人になるための通過儀礼=セックスのメタファーとなっており、新しい環境で他者との関わりに戸惑う、ティーンらしい学園青春映画でもあります。

主人公のジュスティーヌを演じるあなたが、とても素晴らしい。少女らしい硬い表情を見せながら、自身の肉体を最大限に観客に同化させることに成功しています。あなたが肉の味を知った夜、全身に出来た湿疹を掻きむしるとき、観客はその痒みと痛みを共有します。あなたが自身の髪の毛を貪り食い、トイレで嘔吐するとき、観客もまた強い吐き気を覚えます。そしてムダ毛処理の痛みと言ったら!痛みや痒み、吐き気など生理的な反応をビビッドに観客に伝えることが出来るのはデュクルノー監督の手腕と、あなたの切実な演技があってのことです。

ホラーの形をとった少女の成長物語は映画では一種のジャンルであるとさえ言えます。「キャリー」しかり、「僕のエリ 200歳の少女」しかり。私は安川有果監督の「Dressing Up」を思い起こし、とても似た感覚を覚えました。「Dressing Up」も自分の中の怪物といかに折り合いをつけるかという物語を祷キララという少女の肉体が支えていました。今作のあなたも同じように、テーマを理屈ではなく肉体で完全に表現しているように思います。

もう一人、今作の重要な登場人物は姉であるアレックス(エラ・ルンプフ)です。あなたとアレックスの立ちション(!)シーン、大学の屋上でのキャットファイト。反発し合いながら、根源的な部分で結ばれたアレックスとのエピソードの数々は過剰なエモーションに彩られ、ときには詩情が溢れ出します。アレックスはあなたを肉の味へと誘う堕天使であり、導師であり、一方で孤独な世界で肩を寄せ合う同志でもあるのです。アレックスの切断された指を(食欲に負けて)あなたが思わずしゃぶり始めるシーンには、戦慄と同時に良質なユーモアが溢れ、悲惨でありながら思わず笑ってしまう名シーンです。

ルームメイトであるゲイのエイドリアンの凄惨な姿を見た時、あなたは「何故、あなたは黙ったまま、されるがままにされたのか」と叫びます。観客は、それが愛ゆえだと知っています。アレックスと最後に交わす短いさよならと微笑みの意味。観客はそれも愛だと知っています。ホラー映画でもあり、学園青春映画でもあり、ガールズムービーでもある本作は、何よりも「愛」についての映画なのです。少女が大人になるとはどういうことなのか。それは「愛」を知ることと等しいと、あなたの肉体を通じてこの作品は告げているのです。

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