第21回東京フィルメックス「不止不休」
東京フィルメックスコンペティション作品「不止不休」(中国/ワン・ジン監督)を鑑賞。
今から15年ほど前の中国。北京の新聞社に潜り込んだ記者志望の青年が、ベテラン記者に付いて幾つかの事件に遭遇し、やがて大きなスクープを前に決断を迫られる、という物語。この映画の大きなテーマになっているのは、B型肝炎への差別です。B型肝炎は一般感染がしづらくキャリアが大人数に上るにも関わらず、中国では最近まで入学差別、就職差別、結婚差別の対象であったという事実を不勉強ながら知りませんでした。コロナウイルスを背景とした昨今の世情を思わせます。
作品は実際の敏腕記者をモデルにしたそうで、15年ほど前の中国の世相を反映しています。中国におけるジャーナリズムには資本主義国とはまた違った困難があるのではないかと思いますが、この映画で描かれる記者魂は、古今東西の新聞記者を主人公とした映画と同質のものです。監督は賈樟柯監督の助監督を務めたワン・ジン監督で、これがデビュー作。いわゆる社会派エンターテイメント映画として過不足無い仕上がりです。