第21回東京フィルメックス「日子」
東京フィルメックス特別招待作品「日子(台湾/ツァイ・ミンリャン監督)を鑑賞。
台詞一切無し、極端な長回しによる殆どワンシーンワンカット撮影。異質なスタイルで描かれるのは富裕層の中年男性と貧困層の青年の生活であり、別々と思われた二人が交錯する一夜の出来事なのですが、中年男性がゲイであり、青年は男娼を生業としていることが明らかになります。私も長年映画を観てきて多少のことには驚きませんし、特に映画祭では自分の価値観とは違う作品に出会うことは目的の一つでもあります。LGBTは現代映画の重要なテーマでもあるのでそれを持って云々するつもりはないのですが、今作で中年男性がホテルの一室で全裸になりブリーフ姿の青年に性的なマッサージを受ける姿を延々と長回しで(本当に長い!)撮影したシークエンスには、「自分は一体何を観ているのだろう」と、さすがに困惑してしまいました。中年男性はツァイ・ミンリャン監督ファンにはお馴染みの俳優のようですが、私自身この監督作を初めて観ることもあり、心の準備が出来ておらず、図らずもこの作品を観通すことは私にとって一つの試練でもありました。
映画はいつでも自分の理解の及ぶものばかりではありませんし、怠惰な感性に揺さ振りをかけられるのはむしろ歓迎すべき事態ではあります。でもまぁ、中々厳しい映画体験ではありました。