第33回東京国際映画祭「悪は存在せず」
ワールド・フォーカス部門「悪は存在せず(ドイツ・チェコ・イラン/ モハマッド・ラスロフ監督)」を鑑賞。今年のベルリン映画祭金熊賞受賞作。
イランを舞台にした、死刑制度を巡る4つのエピソードからなる作品。恐らく日本公開されるのではないかと思いますし、それぞれのエピソードが短編小説のようにいわゆるオチが用意されているので、あらすじは割愛いたします。いずれも死刑執行人側に視点をおいた物語です。
監督の基本姿勢が死刑制度反対にあるのは明らかです。4つのエピソードはいずれも死刑執行人側を描いており、タイトルの「悪は存在せず」の意味は、制度が死刑執行を要求するのであり、死刑執行人に何らかの邪悪さが存在するのではない、という意味だろうと思います。しかしながら、当の死刑執行人たちはそこに何の葛藤も無いのか、その重圧に耐えられるのか、というのがこの作品のテーマ。
イランは死刑数が多いことや、未成年の死刑執行を行っていることで人権の観点から非難されることが多いようです。私は死刑制度反対論者ですのでこの作品には共感する面もあるのですが、このように死刑執行人が罪の意識を感じ続けている姿を描くのは、実際にイランで死刑執行を担っている人たちにとってはやりきれないだろうな、とも思います。ちなみに、4つのエピソードのうち、第1のものがずば抜けて出来が良いと感じました。