第21回東京フィルメックス「アスワン」
コンペ作品「アスワン( フィリピン/アリックス・アイン・アルンパク監督)」を鑑賞。
フィリピンのドゥテルテ政権の、麻薬の売人・使用者の即射殺も辞さない超法規的麻薬取締についてはブリランテ・メンドーサ監督の「ローサは密告された(2016年)」 アドルフォ・アリックス・Jr監督 「暗きは夜(2017年)」などでその苛烈さが描かれ、ラヴ・ディアス監督の近未来SF映画「停止(2019年)」では独裁者の姿がドゥテルテ大統領を暗示するなど、直接的・間接的に現代のフィリピン映画に強い影響を与えています。
今作はドゥテルテ政権の元で不当に射殺、逮捕される民衆の苦悩を描いたドキュメンタリー作品。アスワンとはフィリピンの民間伝承に伝わる怪物を指しており、独裁的弾圧を行うドゥテルテ政権の恐怖、不気味さを暗示しています。作品中、友達を失った子供や、逮捕され離れ離れになってしまった我が子を思う母親の姿など、とりわけ弱者の姿が描かれており、圧政の最大の犠牲者はいつでも声なき弱者であることを映し出していることが印象的でした。