第33回東京国際映画祭「ノー・チョイス」
プレミア部門「ノー・チョイス(イラン/ レザ・ドルミシャン監督)」を鑑賞。
ホームレスの少女が、恋人に請われて金銭の為に代理出産をしようとする。しかし、病院で調べると出産が出来ないように卵管が手術されており、本人も記憶がない。過去、手術を受けたのは流産したときだけであり、その執刀を行った女性医師に重大な過失があるのではないかと、人権派の女性弁護士が 調査を開始する。
登場するホームレスが女性なら、彼女を護り違法な医療行為を告発する弁護士も女性、その手術を執刀した医師も女性と、イランの女性たちが織り成す過酷なドラマです。恐らくイランではリアリティのある問題でしょうし、代理出産で金銭を得ざるをえないホームレス少女と、弁護士・医師というハイクラスの女性たちとの対比もイラン社会のひずみを感じさせます。特筆すべきはホームレスの少女が頼る、女衒のような男性。その悪徳ぶりがとても印象的で、現代映画では稀代のワルぶり。弁護士と医師の対決という物語の構造を喰い破る強力なキャラクターとして強く印象に残り、映画好きとしては嬉しくなります。