第33回東京国際映画祭「チンパンジー属」
ワールドフォーカス部門「チンパンジー属(フィリピン/ラヴ・ディアス監督)
ラヴ・ディアス監督作は最近では東京国際映画祭でしか観られず、「悪魔の季節(18年)」「停止(19年)」に次いで、本作が出品。
出稼ぎで来た村から、故郷の島に小舟で帰る三人の男。島は、大戦中に日本が慰安所を設けた場所で、この島の人間は皆日本人の血が混じっている、と冗談交じりに言う。島についた三人は村を牛耳る村長や警察を避け、島の裏側から村を目指す。その途中で、三人のあいだに諍いが起きて・・
4時間越えは当たり前のラヴ・ディアス監督作にしては短い2時間30分。物語も随分わかりやすいのですが、考えてみたらラヴ・ディアス監督はモノクロ・キャメラ据え置き・ワンシーンワンカットのあまりに独特なスタイルを除けば、毎回比較的単純な物語を語っており、特に難解な作家というわけではありません。主人公の純朴な青年に対し、敵意を抱く旅の仲間の中年男や、村では陰湿な策略を繰り返す粗野な男など、欲望をむき出しにする「チンパンジー属」の男たち。ラヴ・ディアス監督はいつも人類の根源的な姿を問い続けているようです。